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日記だったり、ネタだったり、備忘録だったり。 若鶏のからあげ先生が日常をユーモラスに描きます。
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朝10時。

上司の清田部長が、キラキラした笑顔で事務所に戻ってきた。

「若鶏!やった!助かったぞ!」

「どうしたんすか、部長、そんなに喜んで。」




「獅子舞だよ、獅子舞。」




「ああ、正月イベントの!」


「そう!社長がしなくていいって!」



清田部長は、先日の会議中に会社のお正月イベントで

獅子舞を呼べと社長から指示されていた。

(関連記事 空気をください



「残念だなぁ、見たかったのに部長の獅子舞。」


「いや、若鶏も見ただろ。アレは無理だろ。」
ちなみに見た動画 3:00~)※音が出ます。ご注意ください。


「で、どうやって社長を説得したんですか?」


「よく聞けよ。

 まず、保存会の人にいくら必要か聞いたら、

 10万!て言われたから、

 俺の想定では5人くらいで来て

 20分で2万はボッタクリだと思ったんで、

 1人1万の想定で『5万でどうか?』

 と聞いたんだよ。

 そしたら、『なら8万!』っていうんで、

 何人で来るんですか?って聞いたんだよ。

 そしたら、





 20人!

 


 って言われて。

 最初から1人5000円計算で
 
 それを2500円に負けろ!って話だから

 さすがに来てもらって1人2500円だと

 子供の小遣いより悪いだろ?


 だから社長に、さすがに獅子舞20人で来られたら

 うちの会社の玄関誰も通れなくなりますよって。

 言ったら、


 
 そんなに来るのか・・・じゃあ獅子舞は諦める!

 とおっしゃったんで、もうオッケーになりました。」


ほっとしている部長


「よかったですね、部長。あ、獅子舞はご存じですか?

無茶ブリをしてみる。



「あれさー、俺、やっちゃったよねー?

 自分で言うのも何だけど完全に何か降りてきてた。

 自分でも言いながら笑ったもん。
 
 俺初めて話すこの人に何聞いてるんだろうって」



部下からの失礼なフリに完璧に合わせる

さすがである。




夕方、業務終了時間5分前。



清田部長宛の電話が鳴った。

「え?はい、はい・・・・・・・はい。わかりました。」

部長が電話を切る。

「若鶏、お前今から空いてる?」

「はい」



「俺たち二人社長に呼ばれたから。

 もう向かいの居酒屋で待ってるって。」



この業務終了間際の社長からの電話は

サドンデスと呼ばれ、うっかり取ってしまうと

納期や抱えている仕事を全て放り投げて

強制的に飲みに行かなければならない悪魔の電話である。



「おう、お前ら来たな。」

「お疲れ様です。」

「まあ飲んで。」


さっそく稀代の太鼓持ち、清田部長が社長に切り込む。

「社長!獅子舞の件は本当に申し訳ございませんでした。」

「いや、いいんだよ、別に。」

「社長の、正月らしさといったら獅子舞という言葉に

 心を動かされて、なんとか実現したいと思い

 若鶏と一緒にいろいろと頑張ってきたんですが。」

「いや、もういいよ。でも本当は獅子舞っていうのは・・・・」


信じられない。

社長がいきなり本音をしゃべりだす。


社長が話せる土壌を作り、そして社長が話し始めたら。

目を閉じ、真剣にうなずきながら話を聞く。

とんでもないスキルである。



これが太鼓持ちで成り上がった清田部長の真の太鼓か。


だが、俺も若手太鼓界では実力ナンバー1の太鼓持ち。


俺の太鼓が部長にどこまで通用するのか、試してみたい。


「社長、実はですね、清田部長は、
 
 社長がどうしても獅子舞やるって言った時のために

 獅子舞の動画を見て、研究してたんですよ。」

「わはは、それ本当?」

社長が笑った。俺のトスは清田部長に届くか。



清田部長が、俺の目を見てゆっくり頷く。

そして、

「そうなんすよ、そして、獅子舞の頭、これを

 もう一人の部下がアマゾンにありますよ!

 とかいって、カートに入れてるんですよ。

 部下二人が俺に獅子舞をさせようとしてるんですよ。

 おかしいでしょ!?」

部長がそのトスをものすごい精度で決める。



社長は目に涙を浮かべながら、笑っている。


「それだけ、清田部長は社長の言われたことを

 しっかりと受け止め、やろうとしているんです。

 僕たちはそれをしっかりとお手伝いしているだけなんです!」

清田部長へのフォローも忘れずに行う。


「いや~、君たち最高!」


というと、社長はお会計を済ませ、駅に向かっていった。


残された太鼓持ち二人。

社長を笑わせたという満足感、

やりきった感でいっぱいだった。




次の日、

朝一番に部長に呼ばれる。


「昨日は、お疲れ様。

 そして、若鶏、

 社長の前で私が一生懸命にやっていることを

 伝えてくれてありがとう。

 社長もあんなに喜んで、うれしかった。

 またこのメンバーで社長のごきげんを取っていこう。」


初めて認められた瞬間だった。




太鼓持ちとして。




突然に部長のデスクの電話が鳴る。

内線番号を見る。

「あ、社長だ。」


「あ、おはようございます。

 清田でございます。

 社長は、はい、昨日、

 はい、いえ、とんでもございません。


 ・・・こちらこそ、ありがとうございます。

 はい、

 はい、

 えっ!?


 ・・・・・・・わかりました。」


 「どうしたんすか部長!」



「若鶏、


 正月イベントで、次は





 和太鼓を検討してほしい






 だって。」




「・・・とりあえず、動画見ましょうか。」




僕は部長のノートPCの電源を入れた。




関連動画
空気をください

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